コト「人間ってなぜ死ぬようになっているの?」
博士「じゃあ、復習しようか」
コト「うん」
博士「無性生殖する生物には寿命がないものがあるんだ」
コト「例えば?」
博士「ベニクラゲがいるよ」
コト「じゃあ、死なないの?」
博士「食べられたり、事故に遭うと死ぬよ」
コト「不死身じゃないんだね」
博士「無性生殖する生物は主に細胞分裂で増殖するんだけど、単純な構造の生物しか生まれないんだよ」
コト「そうなんだね」
博士「有性生殖する生物は多くの植物や動物などのように複雑な構造をもてるようになったんだ」
コト「ふーん」
博士「その代わりに、細胞分裂の度にテロメアが短くなってしまうんだ」
コト「テロメアが短くなるとどうなるの?」
博士「細胞分裂ができなくなる」
コト「それが寿命につながっているのね?」
博士「そういうことになるね」
コト「うん」
博士「有性生殖する生物の雄と雌はDNAを混ぜ合わせることによって新しい生命を生む」
コト「覚えてる」
博士「次世代を残した雄と雌は役割を終えて死んでいく」
コト「うん」
博士「便宜上、ある世代を第1世代と呼ぶとしよう。第n世代はDNAの混合をn-1回行ったことになるんだ」
コト「そうだね」
博士「仮に、第1世代の寿命が無限であると仮定すると、第1世代と第n世代から子供ができる場合がある」
コト「うん」
博士「それよりも第n世代と第n世代から子供をつくったほうが進化に有利だよね」
コト「DNAが変化する機会が多いから?」
博士「そうだね。このように生物は雄と雌による有性生殖を行い、古い個体が死ぬ。この繰り返しにより生物は進化してきたんだ」
コト「うん」
博士「それに第1世代が長生きすると、その分だけDNAに損傷が蓄積しているおそれがある」
コト「DNAの損傷の蓄積はよくないの?」
博士「次の世代が生存するのに不利に働く可能性があるからね」
コト「そうなんだ」
博士「人間はなぜ死ぬのかという疑問に戻ろう。その疑問はナンセンスなんだ」
コト「そうなの?」
博士「僕らの先祖が有性生殖を行い、次の世代を生んで死んでいった。必然的に世代は交代する。だからこそ、進化が促進され、僕ら人間という種族が誕生したんだ」
コト「もし、先祖にあたる生物が有性生殖しなかったとしたらどうなるの?」
博士「僕らはまだアメーバのままだったかもしれない」