コト「世界のどこかしらで戦争は起こっているよね」
博士「そうだね」
コト「早く終わらないかな」
博士「戦争は確かに起こって欲しくないよね。でも、歴史的には戦争が民主主義を発展させたという側面もあるんだよ」
コト「そうなの?」
博士「古代ギリシアのアテネで起こった民主主義の発展について説明しよう」
コト「うん。お願い」
博士「古代ギリシアのアテネは古くは王政、途中で貴族政に変わったと言われているんだよ」
コト「最初は身分があったのね」
博士「うん。まずは、ドラコンが慣習を成文化したんだよ」
コト「それの何が嬉しいのか分からないよ」
博士「貴族達の間で口頭でしか伝わっていなかったルールを平民にも見えるようにしたんだよ」
コト「情報を開示するようにしたのね?」
博士「そうだね。次に、ソロンの改革によってソロンが財産政治を行ったんだ」
コト「財産政治って財産によって権利が異なるってこと?」
博士「そうだね。完全に平等にしてしまえば貴族が不満を持つからね。貴族と平民のバランスをとったんだよ」
コト「バランスは大事だね」
博士「さらには負債を帳消しにして債務奴隷を解放したんだ」
コト「いい方向に向かっているね」
博士「それでも貴族の中から独裁者である僭主が誕生するんだよ」
コト「独裁者って響きが悪いよね」
博士「ペイシストラトスが有名だね。ただ、僭主といってもペイシストラトスは平民よりの改革を行ったんだよ。亡命貴族の土地を没収して貧困層に分配したんだ」
コト「じゃあ、僭主だからといって悪いわけではないのね」
博士「でもペイシストラトスの子供のヒッピアスが暴君化したんだよ」
コト「トップの良し悪しがあるということだね?」
博士「だから、クレイステネスがオストラシズム(陶片追放)を始めたんだ」
コト「オストラシズム?」
博士「陶片に追放すべき人の名前を書いて投票して、一定数(6000)以上に達した人を10年間アテネから追放することにしたんだ」
コト「僭主が誕生しないようにしだんだね?」
博士「そうだね。あとは、貴族の血縁的な部族制を廃止して、人々が区(デーモス)に自由に住んでいいということにしたんだ」
コト「自由な空気が流れてきたのね」
博士「さらに、ストラテーゴス(将軍職)などの役職を抽選で選ぶようにしたんだ」
コト「民主主義が発展したように感じるね」
博士「うん、そんなときにペルシア戦争が起こるんだ」
コト「ギリシアが強大なペルシアに戦争で勝つのね」
博士「そうだね。マラトンの戦い、サラミスの海戦、プラタイアの戦いでギリシアが勝利したんだ」
コト「このペルシア戦争が民主主義に影響を与えたの?」
博士「平民は歩兵として、無産市民は船の漕ぎ手として戦争に参加したんだよ」
コト「戦争で活躍した分、ご褒美がもらえたってこと?」
博士「そうだね。ペリクレスが役人の抽選制をさらに進めて、役人に給料が支給されるようにしたんだ」
コト「貧しい平民でも政治に参加できる機会が増えたのね?」
博士「うん。ただ、選挙権に代表されるアテネの市民権については限定するようにしたんだよ」
コト「どういうこと?」
博士「奴隷や女性にはまだ選挙権は無かったんだよ」
コト「そっかぁ」
博士「アテネの民主化の特徴は、貴族が自ら民主化を進めていることなんだ」
コト「そうなの?」
博士「ドラコン、ソロン、ペイシストラトス、クレイステネス、ペリクレスはいずれも貴族なんだよ。これらの貴族が自ら既得権益を手放すことで民主化を進めたんだ」
コト「スゴイね。でも、なんでなの?」
博士「貴族は騎兵、平民は歩兵、財産がない平民は船の漕ぎ手を担っていたんだ。平民が軍役を担えなくなればアテネは滅ぶ。そうなれば既得権益のすべてが失われるんだよ」
コト「だから貴族は平民の顔色をうかがっていたのね?」
博士「そういうことだね」