生き方を科学する

物理の専門家が科学と哲学を融合します

第31回 一部の人達の権利の主張が他の人達の権利を相対的に奪う?(人類階層:法律、歴史)

コト「個人の権利は他の個人の権利とぶつかることがありえるんだよね?」
博士「そうだね」

 

コト「権利のぶつかり合いが争いを生むんだよね?
博士「そうなるね」

 

コト「じゃあ、争いは避けられないの?」
博士「人権はそもそも絶対的な権力者から身を守るためのものだったんだ

 

コト「そうだね」
博士「国民全員が権利をフルに主張したとしたらどうなると思う?

 

コト「難しいよ」
博士「例えば、国民全員が生活保護の受給を主張したら、その国の財政は破綻するだろう

 

コト「たぶんそうだね」
博士「だから、権利の主張を取り下げる人が必要なんだ

 

コト「そうするとどうなるの?」
博士「権利が認められる人と認められない人がでてくる」

 

コト「それって」
博士「権利が不平等になるんだよ。フランス人権宣言では『権利において平等』ということが明記されているのにね

 

コト「そうなんだね」
博士「一部の人達が権利を主張して押し通すと他の人達の権利は相対的に奪われるんだよ

 

コト「権利は見えないけど重なり合って存在していることがあるから?」
博士「そうだね。目に見えないから、奪われていることに気づかないんだよ

 

コト「そうなんだね」
博士「そして奪われたと気づいたときになってようやく問題を認識するんだ」

 

コト「ちょっと耳が痛いよ」
博士「もう少し掘り下げて考えてみようか」

 

コト「うん」
博士「国民全員が生活保護になると国が破綻するということは権利がどんな状態になっていると思う?」

 

コト「分からないけど、破綻するのはなんとなく分かるよ」
博士「生活保護を得る権利を国民全員が主張することはできないんだ

 

コト「同じことを言い換えただけだね」
博士「『人権が最初から抵触している』ということなんだよ」

 

コト「最初っから問題だっていうの?」
博士「日本では生存権は人権の一種なんだよ」

 

コト「うん」
博士「日本では生まれ落ちた段階で生存権憲法により保証される」

 

コト「外国では?」
博士「生存権はフランス、イタリアでは憲法に規定されているけど、米国、英国、ドイツでは規定されていないんだ

 

コト「そうなの?」
博士「生存権は国によって違う。どこでも同じように作用する物理法則とは違うんだよ」

 

コト「うん」
博士「生存権なんて自然界には存在しない。人間社会が勝手に生み出した概念にすぎないんだよ

 

コト「それはそうかもね」
博士「だから人権は不完全なんだ。人権は平等を建前としているのに、抵触するものだから権利の不平等さを内部に秘めているんだ

 

コト「うん」
博士「それなのに多くの人が人権は絶対的なものだって思い込んでいる

 

コト「そうかもね」
博士「最近では、一般市民が一般市民を攻撃するために人権を振りかざしている印象を受けるんだ」

 

コト「うん」
博士「自分の意見を押し通すのにこんなに便利な言葉はないからね

 

コト「うん」
博士「個人間の権利のぶつかりは個人間に任せればいい」

 

コト「そうなんだね」
博士「けれど、個人の権利の主張を世間一般に認めさせるかどうかは慎重になる必要があるんだよ。特に、社会制度を変更させる場合にはね

 

コト「一部の人達の権利の主張を認めないようにするということ?」
博士「場合によってはね。利益を減らすなりして利益の集中を防止するんだよ」

 

コト「うん」

博士「一部の人達が声高に権利を主張してその人達の権利の主張ばかりが認められれば、他の人達の権利は相対的に奪われるからね

 

コト「そうなんだね」
博士「主張することを控えている人だって人権を携えているはずなのにね

 

コト「うん」
博士「最近では人権の意味するところがだんだん広がっているのかもしれない」

 

コト「そうするとどうなるの?」
博士「抵触する領域が広がっていって争いが起きやすくなるんだよ