コト「生物の世界に平等はあるの?」
博士「生物はDNAをもっているよね?」
コト「そうだね」
博士「生物の個体にはDNAに由来する違いが既に埋め込まれている」
コト「平等とは言い難いのね?」
博士「有性生殖する生物は特にね」
コト「有性生殖する生物だとどうだっていうの?」
博士「有性生殖の場合には雄からのDNAと雌からのDNAを混ぜ合わせるんだ」
コト「混ぜ合わせると問題があるの?」
博士「問題はないよ。ただ、これまでになかった新しい組み合わせのDNAが誕生する可能性がある」
コト「それが進化を生み出すということ?」
博士「そうだね。違う組み合わせの新たなDNAが誕生するんだ」
コト「それと平等とどんな関係があるの?」
博士「生物は性質の異なる個体を生み出そうとしているんだ。まるであえて違いを生み出そうとするかのように」
コト「うん」
博士「それは平等からは遠ざかっていると思わない?」
コト「じゃあ、生物の世界には平等はないということ?」
博士「うん。自然界は平等を支持しない。平等など目指していないんだよ。だからこそ、地球上に多種多様な生物が存在するんだ」
コト「どういうこと?」
博士「じゃあ、仮に、現在の生物界の状況からDNAが平等を目指すと仮定しよう」
コト「うん」
博士「DNAが違いを生み出すことなく、同じ配列を持つようにDNAが変化する」
コト「そんなこと可能なの?」
博士「例えば、雄のDNAと雌のDNAから共通するDNAのみを残して、共通しないDNAを捨てる。それでも種の存続はかろうじて保たれると仮定する。人類と交配することができない種族はDNAを残すことができないと仮定する」
コト「なんか不自然だよ」
博士「平等を目指すということはそれくらい不自然なことなんだよ」
コト「そうするとどうなるの?」
博士「多種多様だった生物は一対の生命体に収束する。そしてその一対の生命体と同じDNAをもつ生命体のみが存在する」
コト「そうなんだね」
博士「もしくは、途中で何らかの病気が流行れば、一対の生命体にいきつく前に絶滅する」
コト「そうなの?」
博士「それが生物界が平等を目指していると仮定した場合の結論だよ」
コト「そんな」
博士「実際にはそんなことにはならないよ。DNAが違う配列をもつように生物は進化してきた。自然界は平等を目指していないんだよ」