コト「もっと自由に生きたいな~」
博士「十分自由に生きているでしょ」
コト「失礼ね」
博士「自由っていうのはなかなか厳しいことだよ」
コト「科学的には自由ってどういうことなの?」
博士「物理的には、他の粒子から影響を受けないことだよ」
コト「うーん」
博士「他の粒子からの影響は相互作用によりもたらされるから、自由というのは相互作用しないことだね」
コト「相互作用しないことって可能なの?」
博士「相互作用しない粒子は存在しないか、存在していることを確認できない」
コト「そうなんだね」
博士「物質は原子からできている。原子核や電子は電磁相互作用をするんだ」
コト「うん」
博士「それに原子核や電子は質量を持っている。重力も作用するんだよ」
コト「そうなんだね」
博士「だから物質は存在することを証明することができる」
コト「それじゃあ物質の世界に自由は存在しないってこと?」
博士「厳密にはそうなるね」
コト「厳密には?」
博士「金属には自由電子というものがある」
コト「自由に動ける電子ということ?」
博士「自由電子は原子核からの電気的な抵抗をほとんど受けない」
コト「ほぼ自由なの?」
博士「金属の外に勝手に出ることはできないけどね」
コト「ふーん、自由なほうがいいよね」
博士「そうとも限らないよ」
コト「どういうこと?」
博士「自由な粒子は構造をつくらない」
コト「構造?」
博士「建物にも生物にも形があるよね」
コト「うん」
博士「原子核と電子が束縛状態をとるから、形ある物ができるんだよ」
コト「束縛状態って何?」
博士「原子核や電子が他の粒子とくっついた状態だよ」
コト「そうなんだ」
博士「原子核と電子が自由な状態をとるようになると物質はばらばらになってしまう」
コト「そうなんだね」
博士「地球上の物質は電磁相互作用で束縛状態をつくっているんだ」
コト「じゃあ、星は?」
博士「重力が天体間に働くことによって銀河という構造ができるんだよ」
コト「星も自由じゃないんだね」
博士「星が一定の軌道上を動いているということは言い換えると束縛されているということだからね」
コト「星が自由に動いてどこかに行っちゃったら困るもんね」
博士「物理法則を鑑みると、自由ということは外界から切り離されているようなもんなんだよ」